●コラム
秋葉原通り魔殺人事件をもとに、通り魔殺人の心理を考えるパート3生育歴の問題
「 親の厳しいしつけと教育により生育歴に関して問題が発生し、子供の頃から粗暴で自己中心的な性格となった。 」
です。
大好評だったパート1は、こちら → ●通り魔殺人の心理【吉高由里子の『蛇にピアス』】をクリックしてください。
同じくパート2は、こちら → ●通り魔殺人の心理Part2【吉高由里子の『蛇にピアス』】をクリックしてください。
さて、通り魔殺人としては過去最悪の被害といえる秋葉原通り魔殺人事件は、2008年6月8日、日曜日の昼頃、東京の秋葉原で歩行者天国が行われている最中に起こりました。
被害者17人の内10人が重軽傷で7人が死亡、そのうち3人は、トラックにはねられたことによる全身打撲や頭部骨折による死亡で、4人は、それぞれ体の1カ所をナイフで刺された失血死でした。
一般に人間は、車でひかれても簡単には死にません。
余程のスピードではねられるか、ひきつぶされないかぎり、死なないものです。
でも、今回は、よほどのスピードだったようで一瞬で3人も亡くなっています。
また、ナイフで殺そうとしても素人(しろうと)が簡単に殺せるものではありません。
今回は、ダガーナイフという軍人がもっぱら殺人にのみ使う先のとがった両刃の恐ろしいナイフを、殺意を込めて下からすくい上げるように力一杯突き刺しました。
ナイフで刺されて亡くなった4人が、それぞれ体の1カ所をナイフで刺されただけで失血死しています。
これから犯人には、異常なまでの殺意があったことが分かります。
今回、なぜ、このような大規模で残虐(ざんぎゃく)な通り魔殺人が起きたのでしょう。
事故が起きてからマスメディアで報道された情報は、かなりの量になりました。
それらの収集した情報をもとに原因別に分けて特にPart3では、
「 親の厳しいしつけと教育により生育歴に関して問題が発生し、子供の頃から粗暴で自己中心的な性格となった。」
について考えます。
犯人の加藤智大(かとうともひろ)の実家は、青森市内にあります。
両親と弟の4人家族で、犯人の智大は高校卒業まで、この自宅で暮らしていました。
実家周辺は、JR社員やサラリーマンなど転勤族や公務員の家庭が多く、犯人は、エリート校の佃中学校から東北の名門、県立青森高校に進学し、まさにエリートそのものでした。
近所の女性は、「小学生の時はあいさつをしてくれた。おとなしくて成績がいいというイメージがある。」と話しています。
でも、小学校の同級生は、「すぐキレて、友人を殴ったり、ガラスを割ることまであった。」と言っています。
人は、やさしいところもあれば恐ろしいところもある、それが人というものです。
でも、子供のころに多くの時間を一緒に過ごした小学校の同級生が証言しているこの内容は、犯人が小学生の段階で、すでに深刻な問題を抱えていたことが分かります。
小学校の卒業アルバムによると、犯人は陸上部や将棋クラブに所属していて、自分の性格を「短気、ごうじょう」と記載しています。
クラスで得意なものがある人を紹介するコーナーでは、「多く本を読む」「足が速い」の欄でトップでした。
犯人の良い点を褒(ほ)めながら、問題点を指導して解決することは、この小学生の段階でできたと思われますが、同じような問題をもつ子がたくさんいる中で、その深刻さが突出するまでにはいたらなかったようです。
確かに異常な部分があったかもしれませんが、まさか将来このようになるとは誰も思わなかったのでしょう。
また、近所のある住民によると、教育熱心だった両親から厳しく育てられていたとのことです。
母親は、犯人と同じく東北の最優秀進学高校である青森高校を卒業しており、教育熱心であったといいます。
また、父親も同様にしつけが厳しく教育には、かなり力を入れていたようです。
子供のころ、しかられた犯人が、玄関前に追い出されて、泣き叫ぶ声を聞いたことがある住民も多くいたとのことです。
また、この東北の雪の多い真冬の極寒の中、薄着で外にいた姿も目撃されています。
「しつけか、虐待か分からなかった。」と、ある近所の住民は言っています。
これは、日本中で、昔から時々見られる厳しいしつけの方法です。
あなたも同じ目にあったことがあるかもしれません。
私もあります。
また恥ずかしいですが、私も子供にそのようなことをしたことがあります。
あまりにも子供が言うことを聞かなくて、同じ過ちを繰り返すために苦しめて懲らしめるためにすることで、教育に対して熱心になり過ぎたために行ったことです。
でも子供は、その状況からその苦しみに懲(こ)りて、親にしかられたことを悔い改めて反省する可能性は少ないと考えるべきです。
子供には甘えがあり、「このくらいなら許してくれるだろう。」という寛大な親の愛を信じて過ちを犯す場合が多いのです。
だから、親に愛情を裏切られたことへの悲しみと憎しみが間違いなく残ります。
でも、子供には自分にとってかけがえのない親は、その親しかいません。
弱い立場にある子供は、それに従うしか、親の愛情を獲得する方法がないのです。
このようなわけで、表向きは親の厳しい恐怖のしつけに従う一見良い子に育っても、実はその苦しみに対する親への復讐を心の奥底に押しやった人間になります。
その心の奥とは、心理学で一般にいわれる潜在意識のことです。
この潜在意識は、そのときに思った感情に対して理性や正義の判断をせずにその思いをどんどん蓄(たくわ)えて行きます。
そして、その潜在意識という心の底に蓄えられたいろいろな感情の集大成が、日々の思いと言動を支配するようになるのです。
ここで、もしあなたが、職場で上司から大勢の同僚の前で怒鳴られ、殴られたあとに多くの人が行き交(か)う職場の建物の前に立たされたとしたらどうでしょう。
たぶん、その日から会社を辞めて落ち込んで家に帰り寝込むことでしょう。
また、やけ酒を狂ったように飲むかもしれません。
このように大人でも耐えられないことを、まだ不完全で何も分からない子供にしているのです。
親は、不完全な子供を愛と忍耐をもってくりかえし教育しなければなりません。
親の深い愛情こそが、子供を変えられます。
親の責任は、とても重たいことを肝に銘じるべきです。
さらに携帯電話の掲示版サイトで犯人が記した言葉を元に考えてみます。
6月4日 5時51分
「 親が書いた作文で賞を取り、親が書いた絵で賞をとり、親に無理やり勉強させられてから勉強は完璧。 」
親が、小学校の時から作文や絵画に手を加えています。
子供が、自らの力で何かを学ぶことが大切なのではなく、親の虚栄心で子供が優秀になることを望んだのでしょうか。
このようなことが実際にあったとしたら問題は深刻です。
そのような親の力でつくりあげた作文や絵画を提出して良い得点をとり続ける子供は、どのような心を育てて行くことになるでしょう。
正義の規範として毅然(きぜん)と君臨するはずの親が、不正行為をすることを強いていることから、子供には良心の呵責(かしゃく)という大切な正義感・倫理観が育ちません。
そして自分の欲しいものを手に入れるためには、何をしても良いという考えをもつようにさえなります。
そして、子供への親の間違った理想像の押しつけと、それを貫こうとした親の神経症のために、小学時代の犯人は、そのしつこい教育に応えることが、愛情を受け止めることだと思い努力を続けています。
犯人は、小学校時代の文集で自らを「短気、強情、鈍感、ドジ」と表現していますが、このような、ひずんだ親の強制的でかつ恐怖の教育のためにストレスがたまり、心の成長に異常をきたしてしまったようです。
厳しく育てたということは、乱暴な「グズ」「ノロマ」「ドジ」「バカ」「間抜け」などの卑下する言葉で、まだ幼い犯人を責め立てていた可能性があります。
未熟な幼い子は、その言葉のために本当に自分がそうなのだと思います。
そして、自信を喪失すると同時に、自分のプライドを傷つけた親を憎むようになります。
さらにダメな自分は、親が導かねば何もできないと学習してしまいます。
これらのことから、正義感・倫理観がない自己中心的で親の愛情の基盤がなくて、自信がなく、頑張る気力もない、一番愛するはずの親を憎む子供になった可能性があります。
また、小学6年間を「5万2560時間」と時間に直して表記したりしていて、「もっといろんなことをしとけばよかった。」「こうかい先にたたず。」とも記しています。
中学校時代の卒業文集には、ゲームの美少女キャラクターを描いた自筆の絵も載せられていました。
その自己アピールの欄には名前や住所、電話番号以外をすべて英語で記述していたほかに、自分の弱点を「過去を問われること」とし、性格を「ひねくれ者(CROOKED)」と書いています。
また、中学時代の同級生は、いつもサバイバル・ナイフを持っていたと話しています。
母親は犯人の高校時代について親しい知人に「2人で食事するのがとても苦痛。(97年に神戸市で連続児童殺傷事件を起こした少年)『酒鬼薔薇聖斗(さかきばらせいと)』と同じ年。怖い。」と話していたとのことです。(※注記参照)
そのときに、具体的に何が怖いかは語らなかったのですが、おびえた様子だったようです。
また、近所の人の話では、犯人が高校せいの頃、母親が目に殴られたような青いアザがありそれを隠すように帽子を深くかぶりサングラスをして歩いてたとの情報があります
もし、母親が息子である犯人に殴られていたとしたら、この時点で、何らかの対策を講じるべきだったでしょう。
子供に対する教育問題のほとんどが、ある時点で親があきらめてしまうことによります。
そして、その状態を支援する公的な組織が整備されていないのです。
科学の進歩は、めざましくたとえば高機能な携帯電話で色々なことができますが、それにともなって発生する人間の心のひずみを解決する方策については、まったく手つかずの状態です。
(※注記)神戸連続児童殺傷事件 1997年3月、神戸市須磨区の住宅街で、女児ばかりを狙った通り魔事件が連続して発生。ハンマーで殴られた小4女児が死亡。5月には同区内の市立中学正門前に、行方不明だった小6男児の切断した頭部を発見。直後、「酒鬼薔薇聖斗」名義で地元新聞社に犯行声明文が送られるなどしたが6月、当時14歳の中2少年を逮捕。関東医療少年院に収容され、05年1月に退院。2008年25歳になる。
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